「政治×予言×陰謀論で読み解く“現代神話”の仕組み」

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ババ・ヴァンガの予言と小泉進次郎――これは現代の神話か?

「1981年生まれの日本人が世界を救う」

この、どこか中二病めいたフレーズを本気で信じてしまいそうになる文章を、あなたは読んだことがあるだろうか。

これは、かの月刊ムーに掲載された記事タイトルである。もちろん予言者は、東欧の盲目の神託者ババ・ヴァンガだ。

ノストラダムスと並び称されるこの人物が、なんと日本の未来の総理大臣・小泉進次郎を予言していたかもしれない──そんな内容だ。

一見するとオカルト全開。しかし冷静に読み解いてみると、この文章の構造や心理的な仕掛けには、驚くほど**今の時代に通じる“物語戦略”**が仕込まれている。

【1】予言とは「未来を語る」ことではなく、「過去を意味づける」こと

多くの人は誤解しているが、「予言」は未来を当てるものではない。

むしろ現代では、「起きたことを、昔の予言に当てはめて意味づける」ために使われている。

今回の記事も、「1981年生まれの日本人が世界を救う」という予言に対して、

その年に生まれた小泉進次郎がいる

彼は今、自民党総裁選に名乗りを上げている

⇒ これは“当たった”んじゃないか!?

というふうに、“後出しジャンケン”で予言が完成していく。

ここにあるのは、「未来予知」ではなく「信じたい物語への貼り合わせ」だ。

【2】英雄待望論としての“1981年生まれ”

ババ・ヴァンガの「日本と世界を救う」という言葉は、まさに救世主伝説の構造をしている。

  • 「1981年に生まれている」=“メシアはすでにこの世にいる”という前提
  • 「日本と世界を救う」=国内外の混迷を打破する英雄像

これに小泉進次郎という“華麗なる血統”の人物をあてがえば、神話は簡単にできあがる。

しかもイルミナティカードの絵柄が「似ている」ということで、さらに都市伝説が加速する。

こうして、政治・予言・陰謀・スピリチュアルが一体化した「現代型神話」が完成するわけだ。

【3】なぜ、私たちは“この手の物語”に惹かれてしまうのか?

これは単なるオカルト記事ではない。

むしろこの構造は、以下のような現代人の無意識の欲求に応えている。

  • 社会に対する不安 → 「誰かがなんとかしてくれる物語」がほしい
  • 未来の見えなさ → 「すでに予言されていた」という安心感
  • 政治への不満 → 「別の血筋」「新しい力」に期待を託したい
  • 理性ではなく感情で動きたい → オカルトは、常に“感情の物語”である

つまりこれは、時代が不安定な今だからこそ、人々が“物語に癒やされたい”という潜在的ニーズを刺激しているのだ。

【4】予言は現代の“ストーリーマーケティング”だ

こういった文章は、「信じさせること」が目的ではない。

むしろ「信じたくなる余白を与えること」が狙いだ。

事実、ババ・ヴァンガの発言は明確には記録されていない。

しかし「誰かが聞いた」という口伝、「本を譲ってもらった」という伝承、「カードの絵が似ている」という視覚的連想によって、読者の想像力に火をつけている。

これこそが、noteやSNS時代における“物語設計”のモデルケースとも言える。

あえて曖昧なまま、現実の中に非現実を潜ませる。

その結果、人は「信じたい」と思った時に、信じられる。

【まとめ】

この文章は、一種の社会的ファンタジーだ。

小泉進次郎がどうこうというより、「希望が欲しい」「救われたい」「誰かに導いてほしい」という気持ちを、ババ・ヴァンガの言葉に託している。

だからこれは、現代の人々が抱える不安と空白に、そっと物語の形で手渡される“予言エンタメ”なのだ。

もしあなたがこの記事を読んで「信じたくなる」と思ったのなら──

それは世界が不確かなままであることの証かもしれない。

信じるか信じないかは、あなた次第……いや、誰もが信じたいのかもしれない。

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